ハ・ジウォン(하지원)、チュ・ジンモ(주진모)、チ・チャンウク(지창욱)主演の韓国ドラマ
奇皇后(キ・ファンフ:기황후:きこうごう)の第5話解説(あらすじ含む)です。
奇皇后 キャスト・登場人物紹介(改訂版)
スンニャンの使う弓・片箭(ピョンジョン)は最終兵器
スンニャンが好んで使う武器・片箭(ピョンジョン:편전)。韓国時代劇ファンでも目にしたことがないという方はけっこう多いのではないでしょう?
普通の弓矢のシステムとは異なる形状をしていますね。本国だということもありますが、この弓矢のシステムは、韓国人にはよく知られています。
というのも、2011年に大ヒットした映画、『最終兵器 弓(チェジョンビョンギ ファル:최종병기 활:邦題:神弓-KAMIYUMI-)』で紹介されたからです。
上の写真はスンニャンと片箭(ピョンジョン)。先の回でこの絵が見られます。
そもそも片箭の箭の字に馴染みがないかと思いますが、音読みだとセン、訓読みだとヤと読みます。はい、矢と同じです。
このことからもわかるように、片箭とは狭義にはこの特殊な短い矢を指します。また、広義にはこの弓矢のシステムのことを言います。
別名でエギサル(애기살:赤ちゃん矢)とも呼ばれます、また中国側からは高麗箭(コリョジョン:고려전)とも呼ばれます。
片箭の矢は30cm前後しかないものすごく短い矢です。一説には40cmだとも言われていますが、それにしても通常の矢が80cmほどだったため、半分の長さしかありません。
上の半分に割いた竹筒がトンア(통아)です。その下の短い矢が片箭です。一番下は普通の矢です。
このように短い矢は理論上、射ることができませんよね?弦を最大限引いた際に、持ち手と引き手の間より短い矢は射ることができません。
そこで、竹筒を補助に使ってその中に仕込むことで射ることを可能にしたのです。
トンア自体は弦につがえません。引き手側に輪っかにした紐をつけており、射ると同時に引き手と一緒に元から離れる仕組みです。
片箭(ピョンジョン)の威力は?
ここからは元アーチャーとしてお話します。
矢というのは軽ければ軽いほど飛行速度が早くなり遠くへ飛びます。アーチェリーの場合には大雑把に言ってアルミとカーボンの矢があるのですが、後者のほうが断然早いです。
また、早いほうが殺傷能力と射程距離に優れています。
片箭の場合には素材は同じで長さが半分なのでそれだけで矢の飛行スピードが早いのがわかります。さらに、矢自体が短いということは目視もしづらいので、狙われた方はよけにくく危険でした。
そのため、普通の弓に比べても有用で、朝鮮第3代太宗(テジョン:태종)李芳遠(イ・バンウォン:이방원)や第4代世宗(セジョン:세종)も推奨していた武器です。
また、トンアを使用することもあり、この矢は普通の矢とは異なる動きをしました。通常矢というのは左右にたわみながら飛行します。(アーチェリーで言うアーチェリー・パラドクス)
けれど、片箭の場合には矢が短い上にトンアが銃身のような役割をするためにパラドクスがさほど生じず、弾丸のような動きを見せます。
現代の各種実験においてもその優位性は顕著です。昔の文献にはかなり大げさにその威力が記述されていますが、実際には数10%~50%アップといったところでしょう。
片箭は実際に有効だったのか?
これについては微妙なところです。射るまでの時間がある場合には問題はありませんが、戦場で一刻一秒を争う際には、トンアを装着する時間がデメリットになります。
また、トンアがなければ使用ができない上に、システムが複雑になるということは使用者に熟練度が要求されます。そのため、戦場においては決定的な武器ではなかったものと推測できます。
もし片箭(ピョンジョン)が決定的な武器だったのなら、高麗(コリョ:고려)なり朝鮮(チョソン:조선)は周辺国を脅かすほどの軍事大国だったことでしょう。
けれど、歴史が物語っているように、奇皇后の時代には元に、時代が下ると壬辰倭乱(イムジンウェラン:임진왜란)では日本に、さらには丙子胡乱(ピョンジャホラン
そのため、局所的・限定的には有効だったものの、戦略兵器とまでは行かなかったというのが個人的な心象です。
韓国人に片箭はどうだったのかと問うと、神がかり的な弓だったと熱く語る男子も多いですが、歴史は嘘をつかないということで、引き算しながら話を聞きましょう(笑)
片箭(ピョンジョン:편전)動画
テレビで見てもどのように射られているのかわからないですよね?というわけで、実際に射ている方の動画を貼っておきます。ご参考までに!
文責:韓国ドラマあらすじ団
コメント
日本では片箭のことを管矢といいます。『弓の道』という本によれ ば、日本でも管矢は使われていたようですが、朝鮮半島地域ほどたくさん使われたわけではありません。ある流派の秘伝のように扱われたイメージですね。
また管矢という言葉自体は、どの辞典、辞書にも載っていないため死語に近い言葉ではないかと思われます。しかし『弓の道』のような弓道関係の本に登場するのを見れば死語辞典に載せるような言葉ではないだろうとも思います。実際、和弓で管矢を射る方もいらっしゃいますしね。
せっかく片箭の紹介をしてくださるのであれば日本の管矢との比較も面白と思いますね^^
よろしければその比較をブログ等にまとめてみてください。
紹介させていただきますので!